副業で家賃収入を得る場合の確定申告ガイド

副業で家賃収入を得る場合の確定申告ガイド

1. 副業で家賃収入を得るとは?

日本において「副業」として家賃収入を得ることは、近年非常に注目されています。会社員や公務員が本業の収入以外にも安定した収入源を持ちたいと考える中、不動産投資や賃貸経営が人気の選択肢となっています。副業としての家賃収入は、マンションやアパート、一戸建てなどの不動産を所有し、それらを第三者に貸し出すことで毎月の賃料収入を得る仕組みです。
従来、日本では副業が制限されている企業も多くありましたが、働き方改革やコロナ禍をきっかけに、副業解禁の流れが強まりました。その結果、副業として不動産投資を始める人も増えています。特に都市部ではワンルームマンション投資やシェアハウス経営など、多様なスタイルが見られるようになりました。
また、サラリーマン大家さんという言葉も浸透し、本業と両立しながら着実に家賃収入を積み上げていく人が増加しています。ただし、家賃収入には確定申告や税金の知識も必要となるため、事前に基礎的な仕組みや注意点を押さえておくことが重要です。本記事では、そのポイントについて分かりやすく解説していきます。

2. 確定申告が必要になる条件

副業で家賃収入を得る場合、確定申告が必要になるかどうかは、年間の所得金額や具体的な状況によって異なります。ここでは、確定申告が必要となる主な条件やケースについて詳しく解説します。

家賃収入に関する確定申告の基準

一般的に、不動産所得(家賃収入から必要経費を差し引いた所得)が次の基準を超える場合、確定申告が必要です。

状況 確定申告が必要となる所得金額
給与所得者(会社員など) 不動産所得が20万円を超える場合
給与以外の所得のみ(自営業など) 所得の合計が48万円を超える場合

具体的なケース例

  • 会社員が副業としてマンション一室を貸し出し、年間の経費差引後の家賃収入が25万円→確定申告が必要
  • パート勤務者で家賃収入の所得が15万円→確定申告は不要(他に申告すべき所得がない場合)

申告義務のポイント

「所得」とは、単純な家賃収入額ではなく、「家賃収入 - 必要経費」で算出されます。必要経費には管理費、修繕費、減価償却費などが含まれますので正確な計算が重要です。また、少額でも他に副業や雑所得がある場合、合算して基準を超えると確定申告義務が発生することもあります。

まとめ

副業で家賃収入を得ている方は、上記の条件やケースに当てはまるか確認し、該当する場合は必ず期限内に確定申告を行いましょう。税務署からの指摘やペナルティを防ぐためにも、自分の状況に合わせて早めに準備を進めることが大切です。

必要な書類と準備するもの

3. 必要な書類と準備するもの

副業で家賃収入を得ている場合、確定申告の際には様々な書類や資料を事前に用意しておくことが重要です。ここでは、スムーズに申告作業を進めるために必要なものを一覧でご紹介します。

家賃収入に関係する主な書類

  • 賃貸契約書:家賃収入の発生根拠となる契約内容が分かる書類。
  • 家賃の受領記録:通帳のコピーや振込明細など、実際に家賃を受け取ったことを証明できる記録。
  • 領収書・レシート:管理費や修繕費など、経費として計上するための支出証明。

確定申告で必要な基本書類

  • 確定申告書B:副業による不動産所得がある場合に必要な申告書。
  • 青色申告決算書(または収支内訳書):青色申告の場合は決算書、白色申告の場合は収支内訳書。

その他、準備しておきたい資料

  • 固定資産税納付通知書
  • 火災保険料の証明書
  • 不動産取得時の売買契約書や登記簿謄本
記録の保管方法について

すべての関連資料は年度ごとにファイリングし、最低でも7年間は保管しておくことが法律で定められています。また、デジタル化されたデータもバックアップを忘れずに行いましょう。これらの準備が整っていれば、確定申告時に慌てることなく手続きを進められます。

4. 家賃収入の計算方法と経費の扱い

副業として家賃収入を得ている場合、日本の税制では所得税や住民税の課税対象となります。正確な申告のためには、家賃収入の算出方法や必要経費の取り扱いについて理解しておくことが重要です。

家賃収入の計算方法

まず「家賃収入」とは、賃借人から毎月受け取る家賃のほか、共益費や礼金、更新料なども含まれます。ただし、敷金や保証金は原則として返還が前提なので、基本的に収入には含めません。

家賃収入に含まれる主な項目

項目 収入区分
家賃
共益費・管理費
礼金・更新料
敷金・保証金(返還分) ×
違約金(未返還分)

必要経費として認められる費用の例

家賃収入から差し引くことができる「必要経費」は、実際に不動産経営にかかった支出です。これらをきちんと計上することで、課税所得を減らすことができます。

主な必要経費一覧

費用項目 具体例・ポイント
固定資産税・都市計画税 年度ごとの納付額全額が経費となる
減価償却費 建物や設備の取得価額を耐用年数で按分して計上する必要あり(※土地は対象外)
修繕費・維持管理費 清掃代、水道光熱費、小規模な修繕工事などが該当。ただし資本的支出との区別が重要。
ローン利息(支払利息) 借入金の元本部分は不可、利息部分のみが経費になる。
管理委託料・仲介手数料等 不動産会社への委託料や契約時の仲介手数料等も含む。
火災保険料・損害保険料等 保険期間に応じて案分計上する。
交通費・通信費等(関連分) 物件管理や賃貸募集など業務に直接要した分のみ。
その他雑費等(関連分) 文房具代など、業務に関わる諸経費。

家賃収入-必要経費=課税所得のイメージ例(年間)

金額(円)
A. 家賃収入合計 1,200,000
B. 必要経費合計 -600,000
C. 課税所得(A-B) =600,000
ポイント:

AからBを差し引いたCが確定申告時の「不動産所得」となり、この金額に対して所得税・住民税が課されます。領収書や契約書など証拠資料を必ず保管し、正確に記帳しましょう。

5. 確定申告の流れと注意点

実際の申告手順:e-Taxと書面申告

副業で家賃収入を得ている場合、確定申告は毎年必須となります。申告方法は主に「e-Tax(電子申告)」と「書面申告」の2通りです。
e-Taxの場合:事前にマイナンバーカードやICカードリーダーの準備が必要です。国税庁の公式サイトから専用ソフトを使って入力し、必要書類も電子データで添付して送信します。自宅から24時間いつでも提出できるので、忙しい方におすすめです。
書面申告の場合:税務署や市区町村の窓口で申告書を受け取り、手書きまたはパソコンで作成後、必要書類を添えて税務署へ持参または郵送します。

提出期限について

確定申告の提出期限は原則として毎年3月15日までです。ただし、期限が土日祝日の場合は翌営業日まで延長されます。
この期間内に提出しない場合、「無申告加算税」や「延滞税」が課せられることがあるため、早めの準備が重要です。

ミスしやすいポイント

1. 家賃収入・経費の記載漏れ

家賃収入や管理費・修繕費などの経費を正確に記載することが大切です。領収書や通帳記録を元に、一つひとつ確認しましょう。

2. 減価償却費の計算ミス

建物や設備には減価償却費が発生します。耐用年数や取得価格をもとに、正しく計算してください。

3. 控除の適用忘れ

青色申告特別控除や配偶者控除など、適用できる控除を見逃さないよう注意しましょう。

税務署からの問い合わせ対応

提出後、不明点がある場合は税務署から問い合わせが来ることがあります。この際は慌てず、内容を確認し、領収書や契約書など証拠書類を準備して丁寧に対応しましょう。不備があれば速やかに訂正・追加提出することでトラブルを防げます。

6. よくある質問とトラブル事例

家賃収入の副業確定申告に関するFAQ

Q1:副業で得た家賃収入は必ず確定申告が必要ですか?

はい、副業であっても家賃収入が年間20万円を超える場合、原則として確定申告が必要です。給与所得以外の雑所得や不動産所得として申告しましょう。

Q2:必要経費にはどんなものが含まれますか?

修繕費・管理費・固定資産税・火災保険料・減価償却費など、家賃収入を得るために直接関わる支出は必要経費として計上できます。ただし、プライベート利用分は按分が必要です。

Q3:青色申告と白色申告、どちらを選ぶべき?

青色申告は帳簿付けが複雑ですが、最大65万円の特別控除や赤字の繰越しなどメリットがあります。不動産所得が継続的に見込めるなら青色申告がおすすめです。

Q4:副業の家賃収入を会社に知られたくない場合は?

住民税の徴収方法を「普通徴収」に設定することで、副業分の住民税通知が会社へ行かず、自分で納付できます。確定申告書第二表の該当欄にチェックしましょう。

実際によくあるトラブル・相談事例

事例1:経費計上ミスによる追徴課税

自宅部分と賃貸部分の経費を区別せず全額計上してしまい、税務署から否認されて追徴課税となったケース。按分計算や領収書管理は厳格に行うことが重要です。

事例2:確定申告漏れによるペナルティ

「少額だから大丈夫」と思い込み、家賃収入を申告しなかった結果、無申告加算税や延滞税が課された事例。20万円以上の場合は必ず申告しましょう。

事例3:青色申告承認申請忘れ

青色申告で節税したいと思っていたが、「青色申告承認申請書」を期限内(原則3月15日まで)に提出しなかったため、その年は白色申告になってしまったパターン。早めの準備がポイントです。

事例4:副業禁止規定とのトラブル

会社規定で副業禁止なのに家賃収入を得ていたことが発覚し、懲戒処分となったケースもあります。就業規則や社内規程も必ず確認しておきましょう。

これらのよくある質問やトラブル事例を参考に、正しく確定申告を行い、副業家賃収入でトラブルなく安心した運用を目指してください。